迷ったら茨の道を行け!紳士服店社長の選択

佐田展隆『迷ったら茨の道を行け ―――紳士服業界に旋風を巻き起こすオーダースーツSADAの挑戦』(ダイヤモンド社、2018年)

今回紹介する本は、株式会社佐田の佐田展隆社長が書かれた本です。

株式会社佐田はオーダーメイドスーツを19800円という激安で販売する紳士服店です。

社長の座右の名は「迷ったら茨の道を行け」。

なぜ佐田社長は、あえて苦しい選択を取るのでしょうか?

佐田社長の半生が書かれたこの本から、学んでいきたいと思います。

 

 

逆境ばかりの社長業

佐田社長は初め、株式会社東レに勤めていましたが、先代社長の父親から佐田に戻るよう言われ、家業を手伝うことになりました。

戻った当初の佐田は、資金繰りにとても苦しんでおり、有利子負債はなんと24億円に登ったそうです。

様々な改革の結果、一年半で経常黒字になりましたが、利子の支払いに追われるようになりました。

このままでは支払いができないため、中小企業の金融再生プログラムを受けることにしました。

この制度は、将来有望な企業が借金を棒引きにできる制度です。

しかしプログラムを受けるにあたり、簿外の債務が次々と明るみになり、何度も何度も計画を作り直すことになります。

さらにプログラムを受けた後も、経営権が投資ファンドに移り、佐田社長も解任されてしまいます。

読んでいるだけでも、胃がキリキリするような逆境を佐田社長は経験してきました。

退社、就労そしてまた佐田へ

退社後、佐田社長はIT企業やコンサルティング企業で働きます。

これらの会社で、佐田社長は2つの重要なことを学びます。

1つは、社員を決して使い捨てにしないということです。

従業員を家族のように接する、佐田の社風の良さを改めて感じるたそうです。

もう1つは、人に自分の考えを伝えるスキルの重要性です。 

元々体育会系だった佐田社長ですが、気合い論だけでは自分の思いが伝わらないことを学んだそうです。

そして、東日本大震災から2ヶ月後、佐田の後任の社長から戻ってきてほしいと電話がきます。

佐田の状況は前よりも悪くなっており、戻ることはまさに火中の栗を拾う行為。

妻にも反対されたそうです。

しかし、ここで佐田社長は、祖父からいつも聞かされてきた「迷ったら茨の道を行け」という言葉に従います。

「今こそ茨の道を選択をすることが、佐田家の教育を受けた者にはふさわしい」

 

佐田社長の思い

佐田社長の軸となっているのは、幼い頃祖父から聞かされた「迷った時は茨の道を行け」という教えです。

人は目先の利益につられて楽な方を選び、短期的な痛みから逃げてしまいがちです。

しかし、そのような心を理性の力で抑えることができれば、真剣に迷っている時点で、本人はどちらの道に行くべきなのか実はわかっている、という考え方です。

そして茨の道を進むためには、次の5つのマインドが必要であると、佐田社長は述べています。

1つ目はおもてなしの心。

金融再生プログラムでの経験から、他者のことを真剣に思う心が人を動かすのだと感じたそうです。

2つ目は、自責の思考。

自分でコントロールできないことは前提条件と考え、自分がコントロールできることに全力を尽くす、という考え方です。

3つ目は、チャレンジ・スピリット。

環境は常に変化しており、変化に対応できない個人や組織は淘汰されていきます。

昨日と違うことに取り組もうとするとチャレンジ・スピリットが必要になる、と考えているそうです。

4つ目は、ポジティブ・シンキング

ネガティブなことを正面から受け止めた上で、どうやってボジティブに考えていくかという技術です。

5つ目は、執着心。

壁にぶつかってすぐ諦めては大きな仕事は成しとげられない。

諦めないためには執着心が必要、という考え方です。

このような心構えを突き詰めて一言で表したのが「迷ったら茨の道を行け」という言葉です。

読んでみた感想

「迷ったら茨の道を行け」

この言葉は私にとって耳が痛い言葉でした。

なぜなら私は、人生の選択で2回ほど安易な道に流れた経験を持っているためです。

その結果、現状が何も変わらず、無為な時間を過ごしてしまい、後悔が残ってしまいました。

茨の道を選ぶためには、常日頃から先に書いたマインドを持って過ごしていかなければと思いました。

また、佐田社長の祖父が話されていた、

「今日できることは明日に伸ばすな」

「戦場ではそれが生死を分けたのだ」

 という言葉も心に残りました。

今できることを疎かにしない、日々の準備ができて初めて茨の道に進めるのだ、ということを学べました。