池田勇人〜今の日本に必要な政治家

池田勇人(1899年〜1965年)は、

戦後日本で活躍した政治家、総理大臣です。

総理大臣のときに所得倍増計画を掲げて、

日本が経済大国になるきっかけを作った人物です。

 

今回は池田が成し遂げたことと、なぜそれできたのか、

を考えていきたいと思います。

 

 

日本が進むべき道を示した池田隼人

池田隼人から学ぶ意義は、

進むべき道を指し示すことです。

 

池田が首相になる前は、日米安全保障条約をめぐり、

日本国内が騒然としていました(安保騒動)。

そんな中、池田は国民に対して、

「みなさんの月給が2倍になるというお話をいたします」

を呼びかけました。

所得倍増という将来のビジョンを掲げ、

経済発展という日本が進むべき道を示したのです。

 

しかし進むべき道を示しても、

実現できなければ意味がありません。

では池田はどうやって、

所得倍増を成し遂げたのでしょうか。

 

所得倍増計画

所得倍増計画は、次の政策で成り立っています。

 

公定歩合の引き下げ

 日本銀行が銀行へ貸し出す基準の金利を下げて、

 銀行が企業に投資しやすい環境を整える。

 

・基幹産業への公共投資

 道路や鉄道などのインフラ産業に投資する。

 

・ 減税

 減税によって企業の利益と家庭の貯蓄を増やす。

 増えた利益と貯蓄を用いて、

 金融機関がさらに企業に投資する。

 

・貿易自由化

 日本の貿易拡大を促進させる。

 

社会保障の充実

 所得増によって増えた税収を活用して、

 国民年金を改善、健康保険の給付率を引き上げる。

 

経済の好循環

上記の政策によって所得倍増計画は、

次のような経済の好循環を生み出しました。

公定歩合下げ&公共投資

生産増

所得増

減税

貯蓄増

銀行の貸し出し&設備投資

生産増(最初に戻る)

 

池田は以上の好循環を、

「10年で給料を2倍にします」

というわかりやすいフレーズで国民に伝えました。

このわかりやすさも成功の要因の一つだと思います。

 

所得倍増計画の成果

所得倍増計画を進めた結果、

10年かからずに国民の所得が2倍に増えました。

町では賃上げのデモをする人が減り、

人々は真面目に働くようになりました。

デモを始めとした暴力で世の中を変えるのではなく、

話し合いによって世の中を変えていく空気に変えました。

 

池田は所得倍増計画を進めることで、

日本を頑張って働けば結果がでる国へ変えたのです。

 

なぜ池田勇人は政策を実現きたのか

なぜ池田は所得倍増計画を実現できたのでしょうか。

理由は、

1)自分が総理大臣になれるチャンスを逃さなかった

2)選挙で得られた民意を元に政策を進めた 

ためです。

 

1)自分が総理大臣になれるチャンスを逃さなかった

安保騒動で岸内閣が退陣したとき、池田は、

「きょう、ある仙人がきてね、つぎは俺だって言うんだよ」

と総理就任への意欲を見せました。

池田の周りの議員たちが、

「すこし情勢が静まってから出たらどうですか」

と言っても意に介しません。

ライバルだった岸が退陣し、

 

後のライバルとなる佐藤栄作は、

自民党総裁選に出馬しません。

池田はライバルがいない今がチャンスと見て、

総裁選に出馬し勝利しました。

 

2)選挙で得られた民意を元に政策を進めた

池田は総理大臣就任早々に、

衆議院解散総選挙に打ってでます。

自分の目玉政策である「所得倍増計画」掲げて、

勝負に出ました。

選挙の結果は大勝。

池田は総選挙で得た民意を背景に政策を進めます。

民意のお墨付きを得ているからこそ、

政策はスムーズに進みました。

 

実はこのやり方は、戦前のやり方を踏襲したものでした。

戦前は、前任者と同じ政党から作られた内閣は、

1年以内に総選挙を行い、民意を問うてから政策を進めていました。

この選挙によって決着させるやり方は、

憲政の常道」と呼ばれました。

池田は「憲政の常道」に従い、民意を得たことで、

所得倍増計画を進めることができたのです。

 

民意を否定される現代政治

時代が下って2013年10月1日。

時の安倍内閣は、消費税8%引き上げを発表しました。

前年の衆議院選挙、さらにその年の参議院選挙で、

安倍首相は経済成長を優先する政策で勝利しました。

しかし消費税を引き上げると、経済成長が阻害されます。

 

政治家は選挙で示された民意があるからこそ、

池田のように自分の政策を進めることができます。

しかしそれが阻害されてしまいました。

 

当時は、全てのメディアが増税を叫び、

財務省をはじめとした官僚も増税の重要性を説きました。

彼らがやったことがいかに罪深いことか。

2013年10月1日、選挙で示された民意が否定されたのです。

 

終わりに〜不安に駆られる今だからこそ

現在は、消費税引き上げで見られるように、

選挙で示された民意が簡単に覆されてしまいます。

これでは政治家は自分が考える政策を、

思い切って実行できません。

国民の側も自分たちの一票が政治に反映されないと、

政治に参加する意欲が削がれてしまいます。

 

さらに消費税の悪影響や新型肺炎が重なり、

閉塞感も漂っています。

不安に駆られる今だからこそ、

選挙で決める政治が必要だと私は考えます。

 

いつか池田勇人のような、

国民を富ませる政治家が出てきた時。

私たちの一票で国の進むべき道を、

決められるようにしたいものです。

 

参考図書

伊藤昌哉『池田勇人とその時代』(朝日文庫、1980年)