2020年アメリカ大統領選挙

今年はアメリカ大統領選挙が行われます。

現職のトランプ 大統領が再選するのか否か、注目が集まります。

今回は現在の選挙の状況を知るために、この本を読みました。

渡瀬裕哉『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書、2020年)

 

渡瀬先生はインターネット等でアメリカの政治について解説されている方です。

この本はアメリカの現状について分析し、かつその内容をコンパクトにまとめている、非常によい本でした。

 

トランプ政権の成り立ちと実態

現在、アメリカで大統領を輩出しているのは共和党です。

共和党は、規制廃止や減税政策を通して市場の活性化を求める政党です。

また党の特徴として、キリスト教の道徳を重んじる傾向があります。

共和党には「主流派」と「保守派」の二つの派閥が存在します。

主流派は中道的なイデオロギーを持ち、民主党との妥協の余地を持っている派閥です。

代表的な人物として、ブッシュ親子が挙げられます。 

一方、保守派はアメリカの建国の理念を大切にし、民主党の政策に反対する姿勢を取っている派閥です。

代表的な人物として、レーガン元大統領が挙げられます。

レーガン以後、アメリカの共和党は主流派の中から大統領を出していました。

トランプは、レーガン以来の保守派の支持を受けた大統領なのです。

トランプが当選した2016年大統領選挙は、「民主党から共和党へ」「共和党主流派から保守派へ」という「二重の政権交代」だった、と渡瀬先生は述べています。

 

トランプ政権は発足以来、どのようなことをしたのでしょうか。

トランプ政権の代表的な成果は規制の廃止です。

トランプは「2対1ルール」という大統領令を出し、不要な規制を廃止し、経済活性化に努めてきました。

このルールは「新規制1本につき不要な規制を2本廃止する」ことを役所に義務付けたものです。

このルールを使って、2017年末までに規制1本につき22本の不要規制を廃止してきました。

このルールによる経済効果は大きく、保守派の基盤である中小企業の支持が増えたそうです。

 

成果を挙げているトランプ政権と保守派ですが、弱みもあります。

それは選挙基盤の弱さです。

実は共和党は、選挙で手足となって動く草の根団体を動かせていないそうです。

その結果、州知事選挙で共和党候補者が敗北や辛勝をしています。

さらに2018年の中間選挙では、上院で共和党民主党から奪った議席は2つと、乏しい成果に終わっています。

これに対して民主党は、ネットによる小口献金を盛んに実施しています。

この結果、資金調達額は大口献金企業献金が主の共和党議員よりも上回っているそうです。

民主党共和党に比べ、豊富な資金を背景に選挙を戦っているのです。

 

2020年大統領選挙3つのポイント

 渡瀬先生はこの本の中で、2020年大統領選挙の勝敗を分けるポイントを3つ挙げています。

ポイントは、

1)ラストベルトとサンベルトのどちらで勝つか

2)民主党の対抗馬は誰になるのか

3)共和党の戦略がうまくいくか

です。

 

1)ラストベルトとサンベルトのどちらで勝つか

「ラストベルト」とは中西部(五大湖周辺)の工業地帯のことです。

この地域は労働組合の影響力が強く、元々は民主党の牙城でした。

トランプは前回の大統領選で、この地域の接戦になった州で勝利して当選しました。

しかし今回は「サンベルト」が選挙戦を左右する可能性があると、渡瀬先生は述べています。

サンベルトとは米国南部の国境沿いの州を指します。

ここは共和党民主党に絶対優位を築いている場所でした。

しかし近年、人口構成の変化や人口流入によって、この地域の民主党支持者が多くなっているそうです。

そのためサンベルトは必ずしも共和党の優位とはならないようです。

注目が必要な地域になりそうです。

 

2)民主党の対抗馬は誰になるのか

対する民主党の候補者が誰になるのかも重要です。

現在、民主党では大統領候補者を選ぶ予備選挙が進んでいます。

予備選挙では候補者が多く(一時期は20名以上)、誰になるのか混迷を深めているようです。

現在の有力な候補者は、バイデン元副大統領、サンダース上院議員、ブティジェッジ・サウスベント市長、ブルームバーグニューヨーク市長です。

それぞれの候補者ともに一長一短があり、渡瀬先生は民主党予備選挙が7月の党大会までずれ込む可能性がある、と考えているそうです。

 

3)共和党の戦略がうまくいくか

トランプと共和党は「経済」と「失業率」を強調する戦略を取っています。

理由は、接戦州の多くは経済が非常に脆い環境下に置かれているためです。

トランプは減税と規制廃止による経済浮揚効果を強調しています。

さらに、歴史上最も低い水準である有色人種の失業率もアピールしています。

このような共和党の選挙戦略がうまくいくかがポイントとなります。

 

まだまだ分析が必要

大統領選の状況を知るに当たって、渡瀬先生曰く「各州の世論調査の状況を詳細に分析することが必須」とのことです。

直近の世論調査や政治状況を分析してみると、大統領選の結果次第では「トリプルブルー政権」もありうるそうです。

トリプルブルー政権とは、大統領、上院、下院す全てで民主党が勝利した政権とのことです。

 理由の一つとして、前述の民主党のネット小口献金が挙げられます。

また「反トランプ」を旗印にして、民主党が団結しやすいことも挙げられます。

 

このように、大統領選挙とその先はまだまだわかりません。

今後も詳細は分析が必要になります。

 

最後に

この本では、メディアが報じない情報や分析が書かれており、とても勉強になりました。

もちろんここには書かれていないことも、本の中にはたくさんあります。

 

今後も渡瀬先生の分析に注目です。