故瀧本哲史氏を偲んで
僕は君たちに武器を配りたい
先月、8月10日にエンジェル投資家(創業間もない企業に投資する個人の投資家)で知られる、瀧本哲史さんがお亡くなりなりました。
生前、瀧本さんは京都大学で「起業論」に関する講義を若者たちに教えていました。
講義を通じて瀧本さんは、若者たちにこれから生きていく上で必要な「武器」を配っていたそうです。
その武器について書かれた本が『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社、2011年)です。
この本は今から8年ほど前のものですが、書かれているメッセージは今なお通じるもののように思います。
そのメッセージとは、誰にでも代用が効くコモディティな人材になるのではなく、代わりが効かない「唯一の人間」になってゲリラの様に戦うことです。
コモディティ人材になるな
経済学では、コモディティを「スペックが明確に数字や言葉で定義できるもの」と定義しています。
市場に出回っている商品が、個性を失い、消費者にとって見ればどの商品も大差ない状態を、「コモディティ化」と呼びます。
コモディティ化は商品だけでなく人材にも当てはまるとしていくと、瀧本さんは伝えています。
例えば学歴やTOEICのスコア、各種資格など、同じものを持っている人は誰でも同じ「価値」として扱われます。
同じ「価値」を提供できるなら、企業は「より安い給料で働ける」人材を選美ます。
結果、必死にTOEICや資格勉強しても、安く働く人材にしかなれないということです。
瀧本さんは、この様な安く働く人材にならないためにも、「コモディティ人材なるな」と伝えています。
スペシャリティな人材になる
ではどうすれば良いか?
瀧本さんは「スペシャリティになれ」と伝えています。
「スペシャリティ」とは、「ほかの人には代えられない、唯一の人物(とその仕事)」「ほかのものでは代替できない、唯一の物」のことです。
では、スペシャリティな人材とはどの様な人材か?
瀧本さんは、マーケター(顧客の需要を満たす人)、イノベーター(新しい価値を見出す人)、リーダー(起業家)、インベスター(投資家)の4つであると考えています。
スペシャリティな人材は、1つ分野の専門家になるのではありません。
お客様が求める(もしくはまだ気づいていない)価値を見極め、
自らの手でビジネスチャンスを作り、
失敗を恐れず長期的な視点で投資する、
そんな人材を目指す必要があります。
リスクを取ってゲリラの様に戦う
瀧本さんは、たとえ周囲から「バカじゃないか」と言われても、自分でリスクを取りに行くべきだ、と伝えています。
さらに、たとえ自分でリスクを取って失敗したとしても、他人のいいなりになって知らない間にリスクを背負わされている生き方よりはマシである、と言い切っています。
状況に応じて先に述べた4つの人材を使い分け、自らリスクを取りに行く、そんなゲリラの様な戦い方を瀧本さんは若者に伝えたいのだと、私は感じました。