日本が危ない!?どうする!?

倉山満『13歳からの「くにまもり」』(扶桑社、2019年)

この本は、今の日本に不安を抱いている人に向けて書かれた本です。

自分の国・地元がなんかやばい、

けれども政治は何も動かない、

自分は日々の暮らしで精一杯、

何かできるとこはないのか?、

そう感じている方におすすめです。

 日本の周りは危ない国ばかり

 日本の周囲の現状はどうなっているのでしょうか?

日本の周辺には、核兵器を持った国がたくさんあります。

中国、北朝鮮、ロシア。

 

これらの国では、自国民であっても強制収容所に送ったり、政府に批判的な学生を次々に拘束したり、大統領の非難したジャーナリストが不審死したりしています。

こんな危ない国々がすぐ隣にいる、まずはこの現状を認識することが大事です。

 

さて日本はこれらの国と渡り合えるだけの防衛力を持っているのでしょうか?

結論から言うと持っていません。

テレビやネットでは、自衛隊は強い!、みたいに宣伝されていますが、日本の防衛予算はGDP国内総生産)の1%にも届きません。

この本では、

弾薬が足りなくて射撃訓練が十分にできない、

戦闘機の飛行訓練時間も足りない、

油がないから実戦では数十分しか艦隊を動かせない、

そもそも日本列島も守るために必要な最低限の人数も確保できていない、

といった話が出てきます。

 

前述のように、日本の周りは危ない国々ですから、本当にいざとなった時、私たちはいきていられるのでしょうか?

いざとならないよう日頃から外交で努力する、と言う考えもあります。

しかし、いざと言う時のことを考えていなければ、甚大な被害を受けてしまうことを、私たちは東日本大震災の時に体験していたはずではないでしょうか?

皇室が危ない!

危ないのは国外だけではありません。

日本の象徴である皇室のまた、危ない状況になっていました。

2006年に悠仁親王殿下がお生まれになるまで、50歳以下の男性皇族がいなかったのです。

男系継承の原則は2000年におよぶ日本の歴史の中で、一度も例外がありません。

ここで言う男系とは、父を辿れば神武天皇に行き着くことです。

この原則は紛れもない歴史的事実です。

悠仁親王殿下がご成長し、男子をもうけることになれば、皇室は今までと同じように続いていきます。

 

では皇室を守る上で最も重要なことなんでしょうか?

この本によると重要な原則は、

先例、

男系、

直系、

の3つです。

先例とは、神武天皇以来の長い歴史を大事にすることです。

自分たちの頭の中だけで考え勝手なことをするのでなく、歴史に学びます。

そうして自分たちは何を大切にしてきか、先人たちは何を大切にしてきたかが分かります。

男系は前述したとおりです。

 

男系の先例は、重要な意味があります。

それは、民間人の男性を皇室に入れない、つまり男性差別の考えです。

同時に女系の否定でもあります。

これは奈良時代に民間人男性が天皇になろうとし、皇室を乗っ取られそうになった教訓からきています。

直系とは、誰の子孫が皇室を継ぐのかということです。

この直系も奈良時代の教訓からきています。

壬申の乱天武天皇が勝ちましたが、奈良時代を経て天智天皇の子孫が最終的に皇位を継ぎ、現在に続いています。

その間、天武天皇天智天皇の子孫たちの間で跡目争いが激しくなりました。

このように誰の子孫を直系にするか、は争いの元になるということです。

 

現在、「愛子天皇待望論」という話がありますが、それは裏を返すと「悠仁親王殿下後回し論」でもあります。

つまり「愛子天皇待望論」は、今上天皇陛下の直系と秋篠宮様の直系が跡目を争う、壬申の乱の再現に繋がってしまうのです。

 

先の大戦で敗戦した時、日本人の9割以上が皇室が必要と考えました。

皇室は、日本が日本である歴史を体現しているからです。

皇室さえあれば、戦争に敗れたとしても日本は日本のままだ、自分たちは焼け野原からでも立ち直れるのだ、先人たちはそう思ったのではないでしょうか? 

では、現在の日本人はどうでしょうか?

 

まずは経済を取り戻せ!

ここで、戦争の焼け跡から復興を果たした先人たちの知恵を借ります。

もう一度、経済を復興させればよいのです。

 

現在、日本は貨幣の価値が下がるデフレーションという状態にあります。

デフレは1998年から始まっています。

この年は、日銀法が改定されて日本銀行が政府から独立した組織になってしまいました。

それまでは、政府と大蔵省の下部組織のため、日銀を従わせることができました。

しかし法改正後の日銀は、頑なにデフレ対策をしませんでした。

2008年のリーマンショック時には、景気対策のために他国がお金を2倍3倍に刷る中、時の総理大臣と日銀総裁はわずか1.2倍しか刷りませんでした。

結果、円高が進だため景気が悪くなり、多くの企業、会社員、学生が悲鳴を上げることになりました。

 

2012年に日銀総裁が現職の黒田氏になり、ようやく日銀がお札を刷り始めました。

インフレターゲットという政策により、物価上昇率が2%になるまでお札を刷り続けることを、内外に示しました。

この結果、企業はこれから景気が良くなると判断し、設備投資や社員の採用を積極的にとるようになりました。

経済の復興がようやく始まったのです。

ところが2014年に消費税8%に引き上げられた結果、また景気が悪くなってしまいました。

景気対策として公共事業を増やしても、一部の業者が恩英を預かるだけで、日本全体の景気がよくなるわけではありませんでした。

 

このように歴史を振り返ると、

特に日銀の政策失敗によってはデフレが長引き、

正しい政策をしても消費税の増税が台無しにしてしまう、

ことが分かります。

 

今の自分は何もできないと思っている方へ

 では自分たちはどうするのか?

政府に知り合いがいるわけでもない、国会議員と仲が良いわけでもない。

そんな人でもやれることがあるでしょうか?

 

ここでも先人たちの歴史からヒントがあります。

江戸時代、全国には適塾というものがありました。

代表的なものは吉田松陰松下村塾です。

適塾では、海外の文献や日本の古文書を読み、議論しあい、知識を深めていたそうです。

また吉田松陰は「自分が将軍になったつもりで勉強しろ」と諭していたように、塾生たちは「自分が日本を動かすとしたらどうするだろう」という問題意識を持っていました。

その結果、自分たちは何をしなければいけないか?、つまり「何が正論なのか」を知り他人に伝えることができました。

 

現在も私たちも同じようなことをすれば良いのではないでしょうか?

これがこの本の著者の提起です。

自分で学問を修め、「何が正論なのか」を見つけていくことが、まだ何も力のない私たちにもできることではないでしょうか?

こうした「目の肥えた国民」が増えていけば、日本全体が正論に進んでいき、前述した危機にも対応できるのでは、と考えます。