ニコロ・マキャベリ『君主論』

マキアヴェリ著、池田廉訳『新訳君主論』(中公文庫、1995年)

ニコロ・マキャベリは15世紀から16世紀にかけての政治思想家です。

ルネサンス期のイタリア・フィレンツェで活躍した官僚政治家です。

彼が書いた『君主論』は今でも読み継がれているリーダーシップ論です。

今回はこの著書の中で、印象に残ったフレーズについてコメントしていきます。

 

【歴史について】

賢い人であれば、先賢の踏んだ足跡をたずね、並はずれた偉人をこそ、つねに範とすべきであろう。それは、たとえ自分の力量がその域には達してはいないとしても、せめてその人物の残香にあずかりたいと思ってである。

 

もう一つの頭を使っての訓練に関しては、君主は歴史書に親しみ、読書をとおして、英傑のなしとげた行いを、考察することが肝心である。(中略)とりわけ英雄たちが、過去に行ったことをそのままやるべきである。 

リーダーは歴史を学び、偉大な実績を残した人物はなぜ成功したのか、考察することが大事であると思いました。

たとえ自分の実力が不足していたとしても、そのような人物を目指そうと努力することが大事であると思いました。

 

【自力と他力】

当事者が事業を遂行するにあたり、他人にお願いしたか、自分でやったか、である。援助を求めた最初のばあいは、かならず禍いが生まれて、なにひとつ実現できない。逆に、自分の能力を信じ、自力をふるった後のばあいでは、めったに窮地におちいることがない。

他人の力をあてにして事業を始めたときは楽ですが、後で助力を得た人たちとの軋轢により、困難に見舞われると思います。

逆に自分の力でリーダーとなったときは、事業を始めるときは困難が続きますが、軌道にのれば苦労したぶん安定すると思います。

自分の足場をどのように固めるか、考えさせられる文章です。

 

【戦いについて】

さて君主は、戦いと軍事上の訓練のこと以外に、いかなる目的も、いかなる関心事ももってはいけないし、またほかの職務に励んでもいけない。

リーダーの責務は戦いに勝つこと=事業で結果を出すことだと思います。

まずはそれを優先すべきだということを、シンプルな言葉で表していると思います。

 

傭兵軍および外国支援軍は役に立たず、危険である。(中略)傭兵は無統制で、野心的で、無規律で、不忠実だからである。(中略)支援軍が負けると、あなたは滅びるわけで、勝てば勝ったで、あなたは彼らの虜になってしまうからだ。

前述の【自力と他力】に関連しています。

戦う上で、自前の戦力を強くすることは重要です。

 一方、その場で雇った人や異なる組織を戦力としてあてにすることは、危険であると述べています。

自分の命令に忠実でない人や、自分が依存しそうになる人を、戦力にしてはいけないと戒めています。

 

【悪について】

しかしながら、一つの悪徳を行使しなくては、政権の存亡にかかわる容易ならざるばあいには、悪徳の評判など、かまわず受けるがよい。

 先日海外に逃亡した某元社長も似たような考えをもっていたのでしょうか。

 自分の人生を左右する重要な局面では、一時の悪い評判も気にしないメンタルが大事だと思いました。

 

要するに、加害行為は、一気にやってしまわなくてはいけない。そうすることで、人にそれほど苦渋をなめさせなければ、それだけ人の憾みを買わずにすむ。これに引き換え、温恵は、よりよく人に味わってもらうように、小出しにやらなくてはいけない。

人を傷つけることがあるときは、小出しにせず徹底的にやることが、結果的に恨みを買わなくなります。

その方が、復讐しようとする気が起きなくなります。

反対に、加害行為を小出しにしてしまうと、人は恨みを晴らそうとしてしまいます。

人を傷つけないに越したことはありませんが、傷つけることがあったとしたら、この

ことに気をつけた方がいいかもしれません。

 

人間について

恐れられるのと愛されるのと、さてどちらがよいか、である。(中略)愛されるよりも恐れられるほうが、はるかに安全である。(中略)そもそも人間は、恩知らずで、むら気で、猫かぶりの偽善者で、身の危険をふりはらおうとし、欲得には目がないものだと。

性悪説の考え方ですが、自分の身を守る方法の一つだと感じました。

愛されるのは周りの人の評価ですが、恐れられるのは自分から周りにそう思わせないとできません。

自分が主体的になって周りの人に「恐れられる」と思わせる、その方が周りから愛されるよりも安全であると思いました。

 

【人材について】

ある君主の頭脳のよしあしを推測するには、まず最初に君主の側近をみればいい。(中略)側近が有能で誠実であれば、その君主は聡明だと評価してまちがいない。

優秀な部下を選ぶのもリーダーの役目です。

部下の選び方でリーダーの実力が測れるのは、よい着眼点だと思いました。

「部下の能力はリーダーの実力以上には伸びない」と野球の野村克也さんはおっしゃっていましたが、それに通じる言葉であると思いました。

 

君主は、つねに人の意見を聴かなくてはいけないが、これは他人が言いたいときにそうするのでなく、自分が望むべきときに聴くべきである。

あくまでリーダーが主体的に話を聞いて、自分で考えて判断することが大事だと思いました。

【運命について】

人は、慎重であるよりは、むしろ果断に進むほうがよい。なぜなら、運命は女神だから、彼女を征服しようとすれば、打ちのめし、突き飛ばす必要がある。運命は、冷静な生き方をする人より、こんな人の言いなりになってくれる。

迷ったときは困難な道に行くことに通じると思いました。

慎重に安全な道を進むよりも、多少強引でも勇気を持って新しい道に進んだ方がよいと思いました。

 

いかがでしょうか。

今から500年以上前に書かれた本なのに、現代に通じる言葉もあったのではないでしょうか。

おススメの本なのでぜひ読んでみてください。